靴作りのためのいろいろな道具をご紹介します

製法や材料によって異なりますが、1足の靴を手で仕上げるためには驚くほどたくさんの道具を使います。おもしろい形や名前の物もあり、普段の生活ではなかなか目にすることがないと思いますのでぜひご覧ください。

採寸に必要な道具


1.メジャー
足の採寸の必需品。幅が狭く(5mm弱)一般的な裁縫道具のように幅広の物では、両端での誤差が大きくなり精度が落ちてしまうので、靴関連の工具類を販売する問屋などで手に入れます。
2.木型(ラスト)
靴を形作るための原型。デザインによって、つま先の形状やヒールの高さが変わるので、木型選びや補正はとても重要。
3.足形
道具ではありませんが、採寸したお客様の足の情報がすべて凝縮されています。この情報を基に、木型を作成または補正するので採寸ミスは許されません。

Tools

製甲に必要な道具-革の裁断・縫い




1.ハケとボンド
革の折り込み、縫う時の仮止め用
2.ゴム板
3のヌキを使う時に敷くもの
3.ヌキ(ポンチ)
飾り穴、ヒモを通す穴などを開ける道具。色々な形・大きさがある
4.金づち 
頭が小さいもので、折り込み・ヌキなど広範囲で使う。
5.銀ペンコンパス
革の縫いしろ、張り込みしろなど均等な幅で描く必要のある箇所に使う。銀ペンの芯をセット
6.銀ペン 
型紙の線を革に描く専用ペン。どんな色の革でも見える銀色のインク
7.目つき
ちょっと怖い名前ですが、折り込みの際にギャザーを寄せたり、銀ペンでは目立ってしまう場所への印付けなど、色々な場面で使用
8.包丁
革を切ったり、すいたりする道具。この形は日本独特のようで、海外のナイフは2枚目の画像のような形です。
9.ウマ
馬の背中の様な形状から?!「縫い割り」に使う↓。赤い矢印の線の部分。曲線形状なので、「ウマ」のカーブに添わせて、縫い目を金づちで叩いて開く。

10.ビニール板
革をこの上で切る。線がいっぱい入っているのは包丁の切り跡

*すき機
革を薄くすく機械。折り込み、貼り込み、革巻きヒール等の時に革を薄くするのに使います。下の青い滑り台を漉いた革くずが滑り落ちてきます。


*ミシン
アメリカ、SINGER社製の古い足踏み式。職人さんの伝手で譲っていただいた物。学校ではモーター式のミシンで習い、形も違って(送りハンドルが右側)慣れるまでに結構時間がかかりました。でも電気系がないため故障がほとんどなく、調子が悪くなっても構造もシンプルなので大体の事は自分で直せます。18種という、靴用のミシンで送り(革をずらしていく部分)がダイアル状です。


Tools

下ごしらえ・つり込みに必要な道具


1.穴ぼこ
中底・革本底などのくせ付け用具。真ん中のくぼんだ穴のところに底革を置き、金づちで叩いて三次元カーブにクセ付けをしていく。
2.ヨージ
水、ボンドなどを塗る時に使うブラシ
3.金づち
職人さんは「ポンポン」と呼んでいました。釘だけではなく、中底のクセ付け、つり込み、底付けなど色々な場面で使う。釘を打つ部分を「カガミ」と呼び、この面に傷や凹みなどがあると、靴の表面を傷付ける可能性があるため常に鏡のようにきれいに保つよう教わりました。後ろの細長い部分も使います。
4.釘抜き
えん魔様の道具みたい?!
5.包丁
6.ワニ 
「つり込み」に使う道具↓ ワニを作る職人さんがいなくなってしまい、日本製を手に入れることができなくなってしまった道具の一つ。

1.ワニの口に似ている部分。
歯のようなギザギザがあります。
2.1で革を挟んで、2の部分をテコにして引っ張って、革を木型に添わせていきます。
 *「靴はこうして作られる」に使用図あり

Tools

すくい縫い・ダシ縫いに必要な道具


1.わげさ
厚めの革を細く帯状に切って輪っか状につなげたもの。土踏まずで踏むようにし膝に引っかけ、木型を膝の上で固定する道具。(使用図↓)
2.ロウ
針の通りを良くするために、糸や 針に塗る。
3.毛針
いのししのたてがみ。今では問屋でも買えなくなってしまい、デッキブラシや細い針金状のアルミでできたもの、布団針のような長めの針を熱してカーブ状に曲げたもので代用する人がほとんどになっている。毛針の程よい硬さとたわみが使いやすく、これも手に入らなくなってしまったことがとても残念な道具の一つ。
4.すくい針・ダシ針
画像はダシ針。
5.麻糸
中底、アッパー、ウェルト、本底を縫い止めるための糸。この糸を使う工程によって異なる本数を縒って、チャン、ロウを塗って縫い糸を作る。



チャン
すくいい・ダシ縫い用の麻糸を縒った時に塗る、松ヤニを油と一緒に煮て冷やし固めた物。季節によって硬さを調整しながら煮る。糸にチャンを引いた後、ロウでコートして縫っていく。糸は作ってからすぐに縫わないと「風邪を引く」(チャンが乾き切れやすくなること)ので作り置きができないため、縫う工程の前に毎回糸を作る。

Tools

底付け・ヒール付けに必要な道具


1.ガラス
キヤスリで整えたコバに曲面を付けながら面をきれいに削る。中底や月・先芯の表面を均すのにも使う。
2.ヤスリ
木型を削る時、ガラスを曲線形状に割ったり、本底の端の処理に使う。
3.面取り
細革を斜めに面取りする時に使う。
4.面ヤスリ 
踵の上面(アッパーとの境)を整える。
5.キヤスリ
コバ(靴底の側面)を整える。
6.ぶっ込み
ペースという木の釘を使う時や修理の際に、縫い糸を取る時に使う。

7.ペンチ
革に傷を付けないよう、もともとの凹凸を削りつるっとしていた状態に改造したもの。細革と本底を接着する時等に挟んで圧着させる。
8.ガリ(溝掘り)
ダシ縫いの溝を掘るための道具として、バネ(シャンク)を加工した自作品。
9.踵材料
道具ではないが、左から積み上げ、化粧、はちまき

Tools

釘にもいろいろな種類が


1.ピカード(ブランド名?)
買うときは19x17の様なサイズ表示を見て買います。職人さんが昔のブランド名で呼んでいました。つり込みの仮留めに使います。
2.ペース
木の釘。長さ、太さは革の厚みにより使い分ける。踵側の本底や積み上げ(ヒール)を留める。
3.タックス
ハンドソーンウエルテッド製法(九分仕上げ)やパンプス類などの踵側のつり込みで使う。最近の既成靴はペースを使わずほとんどこちらを使っています。仕事が速くできるが錆びるのが難点。長さは革の厚みに応じて8mm、10mmと2mm単位で使い分けます。
4.四分五厘 
昔の寸法で呼んでいます。約13mm。ハンドソーンウエルテッド製法(九分仕上げ)の際、本底の踵部分を留めるのに使う。
5.スクリュー釘
積み上げ(ヒール)を留めるのに使う。螺旋状に筋があり、抜けにくい形状。ヒールの高さに応じて長さを選ぶ。女性物のプラスチックヒールにも使います。
6.真鍮釘
錆びない真鍮釘は革の化粧(床に触れる面のヒール材)を留める。ゴム化粧の場合は鉄釘で留める。飾り釘といって、本来1本のところに数本打ち、デザインすることもありますが、滑りやすくなる点に注意が必要である。

Tools